【VATER症候群の桜空くん誕生】難病児・障害児を出産した母の感情

たくさんの病気を持った桜空を産むとき 私が感じたこと

様々な感情を抱き、望んだ出産。
いざ陣痛が来ると「もう産まれてくる!覚悟を決めるしかない!」
そんな気持ちでした。
たくさんの病気を持っているお腹で生きる我が子。
たくさんの病気があっても産まれてこようとしている…
ママも頑張るよ。できるだけ力を抜いて陣痛を逃すように努力するね。
桜空、一緒に頑張ろう。より元気に生まれておいで。楽しみにしているよ。

たくさんの病気を持った桜空を出産 私が感じたこと

桜空は私の願いを叶えてくれました。
生きて産まれてきてくれました。
出産直後の私はアドレナリン全開です。
「産まれた!産まれた!生きて産まれてきれくれた!よかった…桜空、ありがとう!」
心の中でそう思いました。
私はたくさんの病気を持った赤ちゃんを産むことに不安でいっぱいでしたが、出産した直後は大きな幸福感に包まれていました。
この瞬間の感情は、健康な赤ちゃんを産んだときの幸福感と全く変わりなかったと感じます。
ただただ、「桜空が産まれてきてくれたこと」に大きく感謝しました。

桜空は生きて産まれてきてくれましたが、桜空の産声は聞こえませんでした。
担当して下さった助産師さんは「小さな声でうぎゃぁって泣いたよ!」と教えてくれました。
私の耳には聞こえない小さな小さな声でした。
「私も聞きたかったな…」
桜空の産声を聞いた担当の助産師さんがうらやましく感じました。

桜空を一瞬見届けて、桜空はNICUへと移動しました。

桜空の精査結果を聞いたとき 私が感じたこと

「産まれてみないとわからない」

結局は、この言葉に尽きるのだと感じました。
産まれてみると、桜空は妊娠中に指摘された病名ではない病気もたくさん持っていました。
産まれてみると、桜空は生命に関わる病気をたくさん持っていました。
産まれてすぐにはわからず、精査を重ねることで診断された「右主気管支食道起始症」という、とても珍しい病気も持っていました。

診断された病名は「VATER症候群」
医師から精査結果を聞き、病室に戻り、1人ネットで調べました。
良い内容は書かれておらず、VATER症候群の中でも桜空のように深刻な病気を持った赤ちゃんは亡くなっている子が多い現実を知りました。
桜空はたった今、産まれたばかりです。
頑張って産まれてきてくれたばかりです。
なぜ、こんなに深刻な病気がたくさんあるのだろう…
なぜ、こんなことになったのだろう…
桜空は生きていけるの?
桜空…死んでしまうの…?

現実は残酷すぎました。
病室で目が腫れるほどに、たくさん泣きました。

桜空と初めて対面 私が感じたこと

可愛い…
頑張ったね…
えらいね、強いね…
頑張って産まれてきてくれたんだね、桜空…
ママのところに産まれてきてくれてありがとう。

なんて可愛いのだろうと思いました。
健康である赤ちゃんを産んだときと同じ感情を抱きました。

しかし、その後で「こんなに可愛いのに…頑張って産まれてきてくれたのに…」
この感情が溢れます。
元気に産んであげたかった。
みんなと同じ健康な身体で産んであげたかった。
みんなと同じ不自由ない生活を送らせてあげたかった。
産まれたこの瞬間から、みんなと同じスタート位置にいない桜空。
自分で呼吸もできない、おっぱいを飲むこともできない…
「ごめんなさい」
この感情が溢れます。

そして、本来であればできることが桜空に何一つしてあげることができないと感じました。
産まれた桜空をたくさん抱っこしたかった。
産まれた桜空におっぱいをあげたかった。
産まれた桜空の隣にずっといたかった。
私は桜空の母親であるにも関わらず、母親らしいことを何一つしてあげることができないのです。
無力でした。

私は可愛い我が子桜空を病気を持って産んでしまったことに懺悔の感情を抱いていました。
神様は何でこんなに可愛い桜空に大きな試練を与えるのだろう…
神様も仏様もきっといない。

現実に起きていることは、自分の力ではどうしようもできなかったことです。
しかし、納得できない自分がいました。
私の何がいけなかったのだろう…
なぜ?どうして?
自分を責めて、責めて、責めました。
前向きになんて考えることはできませんでした。
前向きに考えようとしても、いつもその気持ちは踏みにじまれてしまうのです。

自分を責めず、ただ目の前にいる我が子に愛を注ぐ

私と同じように障害のある赤ちゃん、難病の赤ちゃん、病気のある赤ちゃんを産んだお母さんへ…
VATER症候群である桜空を産んだ母親として、助産師として、伝えたいことがあります。

自分を責めないで下さい。
あなたが我が子にできること、それは
「ただ目の前にいる我が子に愛を注ぐということ」

つらい、悲しい、悔しい、妬ましい、憤り…
あなたが感じる全ての感情は間違ってなんかいない。
そんなことを感じる自分に母親は務まらない、そんなことを感じる母親は母親失格だ…
そんなことを思っていたら、私と同じですね、と伝えたいです。
私も同じことを感じた当事者、その気持ちは痛いほど理解できるのです。

そして、あなたは悪くない。
これはあなたの力で、あなたの行動で、どうにかできたことではないのです。

産まれた目の前にいる愛おしい我が子。
触れる、語り掛ける、見つめる、想う…全てが親から子への最高の愛です
その親の愛を絶対に赤ちゃんは感じています。
先のことはわからない。
不安でいっぱい…それは子を想っているからこそです。
不安でいっぱい…そう感じるということは、あなたは立派な母親なのです

命は尊いものです。
命に永遠はありません。
もし健康に産まれても、健康が永遠ではないのです。
何年生きるか、健康で産まれるかどうかが大切なのではない。
「愛し愛されて生きること」
私はこれこそが生きる本質だと感じています。
これでもかというくらいの、たくさんの愛をお子さんに注いであげてください。

心から全ての命に感謝しています。
あなたも、お子さんも、産まれてきてくれてありがとうございます。
一緒にたくさんの愛を注ぎ、たくさん愛され、一生を全うしましょう。

【VATER症候群の桜空くん】生後0日目|手術説明|鎖肛による腹部膨満
待望の第3子の桜空(さく)はたくさんの病気を持って産まれました。病名はVATER症候群でした。桜空が誕生した日のことを綴っています。

 

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