【医療ケア児を育てる環境】苦悩と孤独|不完全な環境|社会で育てる環境整備

何も知らなかった「赤ちゃんの退院後のこと」

私は助産師として総合病院に勤めていました。
染色体異常や遺伝子疾患の赤ちゃんの出生にも携わってきました。
集中的なケアが必要な赤ちゃんは産まれるとNICUに入り、退院が近づくとGCUに行きます。
私はGCU退院後の赤ちゃんや家族の生活などは何も知らずにいました。

退院する赤ちゃん、家族に対し、私が思っていたこと、願っていたことは
「今の時代にはちゃんと十分なサポートがあるはず。
家族で抱え込ます、頼れるサポートや支援は受けて、無理をせずに生活してほしい」
「今は平成、助けるからには当然産まれた赤ちゃんと家族を守る支援はすでに確立されていて、
サポートは充実していて、あとはどのサポートを受けるか選択するだけ」
そう思っていましたが、とんでもない勘違いでした。

その勘違いに気付いたのは、自分が先天性疾患をもった子供を出産後に退院してからでした。

大切なのは「知ること」

無知は罪だと思いました。
令和の今の時代も、十分なサポートなんてなかったのです。
「きっと大丈夫だろう」ではなく、退院後の生活が整ってから退院をすべきです。

私は退院後に入院になった場合は、付き添い入院が強制であることを退院が決定後に知り、本当に驚きました。
もちろん、頑張る子供に付き添いたいです。
しかし、体調を崩す頻度が多い子供の24時間毎日付き添いをすることには無理があります。
上の子の子育てもあります。
夫は出張が多い仕事で月に2,3日しか自宅にいない状態のこともありました。
全ての家庭が夫婦で付き添い入院を交代できたり、祖父母が献身的であるとは限りません。
入院が長引くと、精神的にも落ち込み、そんな中での付き添い入院は「元気に産むことができていたら…」と自分を責めるようになっていき、悪循環でした。

生きている限り「訴え続ける」

このブログやYouTubeという手段で訴え続け、私の気持ちを残したいと思っています。

助けられたからこそ、守らなければ!
そう思いました。
しかし、矛盾していますが、助けられたからこそ苦しい想いをしている家族もいます。

自然の摂理を選択しても良い

助けることが「善」で、助けないことが「悪」とは思って欲しくないのです。
結果助けられたことで、高度な医療に日々追い詰められている私たちのような家族もいます。
「24時間、親の付き添い入院の強制」という、難しいことを求められ悩む家族もいます。

もちろん感謝しています。
我が子、桜空を助けるためにたくさんの人が関り、助けて頂きました。
しかし、私は「人工呼吸器が必要であった場合は命を諦める、その子が人工呼吸器を外して生きられる時間を家族一緒に看取ろう」
そう思っていましたが、結果的に意図しない人工呼吸器装着になることもあるのだということも知りました。
私のように「人工呼吸器が必要であれば延命しない」という選択をしていても手術を選択した場合は人工呼吸器管理になるため、その後人工呼吸器からの離脱ができなかった我が子のような場合にはその選択は難しいことを知りました。
また、人工呼吸器で生きている子の人工呼吸器を親の意志で外すこともできないことも知りました。

家族の人生は変わっても「生活を変えてはいけない」

「医療ケア児や障害児の親になる、家族になる」
この時点で人生は大きく変わります
しかし、家族の生活まで大きく変えなければいけなくなる今の在宅看護の現状は残酷すぎると思うのです。
助けるからには、十分な環境を整えなければならないと思います。

私一人が訴えても何も変わらないことはわかっています。
しかし、異常のある赤ちゃんを授かった助産師が在宅看護で感じた疑問はこのブログでしっかり残したいと思います。

 

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