30週での胎児精査の結果
転院先の県立中央病院で胎児精査を受けました。
その結果、「胸腺がはっきりしない」と説明を受けました。
胸腺がはっきりしない?!
「胸腺がはっきりしない」
それは言い換えれば「胸腺がはっきり見えない」ということです。
「胸腺がはっきり見えない」ことは何を意味するか、
「胸腺低形成あるいは胸腺無形成である可能性がある」ということです。
胸腺とは
胸の真ん中辺り、胸骨の裏側にあります。
Tリンパ球と呼ばれる白血球を造っている臓器です。
「胸腺無形成」「胸腺低形成」とは
「胸腺無形成」や「胸腺低形成」と検索すると、22番染色体異常(22q11.2欠失症候群)が検索結果に出てきました。
22q11.2欠失症候群、胸腺低形成症候群(DiGeore症候群・ディジョージ症候群)
22番染色体の一部(22q11.2)に小さな欠失がある疾患です。
免疫不全を起こす先天性の病気です。
出生時に胸腺が全くないか、あっても未発達です。
頻度
4000~6000人に1人
症状
- 副甲状腺低形成による低カルシウム血症
- 胸腺無形成あるいは低形成による易感染性
- 心流出路奇形(ファロー四徴症・円錐動脈管心奇形・大動脈弓離断など)
- 特異的顔貌(口蓋裂・低位耳介・小耳介・瞼裂短縮を伴う眼角隔離症・短い人中・小さな口・小顎症)
- 精神発達遅滞、言語発達遅滞
治療
低カルシウム血症に対する治療
心血管系異常に対する外科的治療
免疫不全状態に応じた感染症予防と治療
また、造血幹細胞移植や胸腺移植の施行例が報告されています。
予後
心疾患の重症度で決まることが多いと言われています。
「22番染色体異常」を疑った我が子
「染色体異常の可能性が高い」と言われていた我が子は転院し胎児精査を受けるまでは「18番染色体異常(18トリソミー)」か「21番染色体異常(ダウン症)」ではないかと思っていました。
しかし、転院した病院で「胸腺がはっきりしない」という指摘を受け、我が子は22番染色体異常なのではないか、と思い始めました。
標準の羊水検査ではわからない「22番染色体異常」
22番染色体異常は、妊娠中に受ける通常の羊水検査では判明しません。
そのため、妊娠中に通常の羊水検査をして染色体異常がなかったとしても、実際に赤ちゃんが産まれて初めて判明する染色体異常ということになります。
妊娠中に行う通常の羊水検査に追加して検査することで判明するため、ピンポイントで22番染色体異常(22q11.2欠失症候群)を指定し追加する必要があり、妊娠中に22番染色体異常(22q11.2欠失症候群)が確実に判明することは稀であると感じます。
産まれてみると存在した胸腺
産まれてから我が子を精査して頂いた結果、胸腺はありました。
22番染色体異常ではなく、染色体異常もなく、桜空は複数の疾患をもった「VATER症候群」でした。
このように、妊娠中で宣告されるものは確定診断を除いては「疑い」でしかありません。
超音波検査などは特に「疑い」であり、産まれてきて「病気がなかった」「病気がないと思っていたらあった」「違う病気だった」という例はたくさんあります。
直接胎児を超音波で調べているわけではなく、母親のお腹にいる状態の赤ちゃんを超音波で診ているため非常に難しいのです。
そのため、産まれてきて「病気がなかった」「病気がないと思っていたらあった」「違う病気だった」という例が多いことは当然と言えます。
大切なことは万全な体制で赤ちゃんの誕生を迎えること
赤ちゃんの異常を告げられ、不安でない母親はいないと思います。
しかし、妊娠中に「赤ちゃんに何か異常があるかもしれない」ということがわかった場合、赤ちゃんを無事に出産するために総合病院に転院するなど体制を整えることができます。
これはとても幸運なことであると感じます。
母児ともに無事に出産することが一番大切です。
より適切な産院で、より適切な分娩方法で、出産の日を迎えて下さい。
母児ともに安全に出産できますことを心より願っています。