左上大静脈遺残(PLSVC)とは
以下、左上大静脈遺残のことをPLSVCと記載します。
正常であれば妊娠初期に左前主静脈が退化し冠状静脈洞を形成しますが、それが退化せず左上大静脈として遺残したものをいいます。
簡単にいうと、本来は退化する血管が残ったままの状態であることをいいます。
生命維持に関係するのか
血行動態には異常がないため、他に心臓の異常などがなければ無症状です。
頻度
健康な人の0.3~0.5%に見られます。
しかし1000人に3~5人、健康な人で見られることは稀です。
PLSVCと胎児発育不全
PLSVCはSGA児(在胎不当過小児:体重が週数相当基準から10%タイル未満である赤ちゃん)や他の合併奇形との関連が強いです。
特に在胎不当過小児では左心系が小さく、出生後の循環障害の可能性もあり、周産期管理に注意を要します。
PLSVCのみである場合は左心系は小さくなることはないと言われています。
37週4日で産まれた男児の10%タイル値は2412gですが、我が子は2114gで産まれました。
妊娠中から他の異常とともに「左心室が小さい」と指摘されました。
上記の「在胎不当過小児では左心系が小さい」ということが当てはまっています。
PLSVCと先天性心疾患
先天性心疾患がある場合はPLSVCの頻度は約10倍増加するといわれています。
手術をせざるを得ないASDはPLSVCを合併例が多いです。
完全型心内膜床欠損、単心室(多脾症のことが多い)、心房中隔欠損、心室中隔欠損、ファロー四徴などに伴うことが多いです。
肺静脈、下大静脈、肝静脈などの還流異常(体肺静脈還流異常)を合併することもあります。
PLSVC合併例は肺高血圧や心不全を来しやすいため注意が必要です。
PLSVCと染色体異常・遺伝子疾患・難病
正確なデータはありませんが、PLSVCは健康な人の0.3~0.5%、ということはPLSVCがあった場合に何かしらの異常があることが99.5~99.7%ということになります。
実際に私が妊娠中にPLSVCについて調べましたが何かしらの異常を持っていることがほとんどでした。
その異常の程度は幅広く、異常が見つかっても経過観察で良い異常であったり、染色体異常があったり、遺伝子疾患があったり、染色体異常や遺伝子疾患でなくても我が子(vater症候群)のように難病で他にいくつもの異常があり手術や医療ケアを必要とする重度の病気をもった赤ちゃんもいます。
PLSVCと手術
PLSVCがあるということを見落とすと重篤な合併症をまねいたり、心臓手術の手技や人工心肺の運転の妨げになる場合があります。
また、PLSVCの存在による左房内の解剖学的変化が短絡量増加に働くと推測されており注意が必要です。
PLSVCを伴った開心術は体外循環時の脱血管挿入様式や心筋保護液の注入方法に問題が生じるため術前の詳細な画像診断に基づいた手術戦略が重要です。
PLSVCよりも重要なことは他の異常が何であるか
PLSVCを指摘され驚いたと思います。
しかし、PLSVC自体は循環動態に異常はなく無症状のようです。
PLSVCがある場合は他に異常があることが多いです。
そのため、重要なことは他の異常が何であるか精査・治療していくことです。
赤ちゃんが出生後にしっかりと精査し、必要な治療を受けられるようにするためにも、定期的に健診を受診し異常の早期発見をしていくことが大切です。