5歳の兄には難しい弟の死
次男の桜空が亡くなったのは、長男である兄が5歳になってすぐでした。
5歳になったばかりの兄には「弟が死んだ」ということを理解することはとても難しいことでした。
桜空が亡くなった病院で涙している私に笑顔でやってきて、「あの看護師さん、優しい!可愛い!」というのです。
子どもでなければ、とてつもないKYです。
そんな兄は県外の病院から自宅に帰る長い道中も泣くことはありません。
しかし「さくくんの横におる!」といって桜空の横に来たり、疲れて寝たりしていました。
そして、兄は自宅に帰り、衝撃の言葉を口にします。
「ねぇ、さくくん、いつ起きるの?」
この言葉を聞いたときは、衝撃のあまり一瞬時が止まりました。
「さくくん、また兵庫県に行かんといかんのやろ?」
「さくくん、今度はいつ帰ってくるの?」
桜空は自宅にいたときも、ほぼ毎月入院していました。
亡くなる前の6ヶ月間はずっと病院でした。
「さくくんは家にいたり、病院に行ってしまったりする…」
5歳の兄にはこう見えていたのでしょう。
桜空が亡くなって自宅に帰ってきたときも、退院できたのだと思ったようです。
そして、ずっと桜空が寝ていて起きないため、疑問に思ったのです。
桜空が亡くなった病院で、桜空は死んでしまったこと、もう一緒にいられないことを伝えていましたが、目の前に桜空の身体はあるのです…
5歳には「さくくん、目の前にいるよ」と思ったに違いありません。
何も悲しいと感じられなかったでしょう。
むしろ6ヶ月ぶりにスマホの画面越しではなく桜空に直接逢うことができ、桜空を見ることができて嬉しかったのでしょう。
桜空が亡くなった病院で、1人笑顔で嬉しそうだった兄の気持ちがここでようやく理解できました。
5歳兄の疑問
兄は、桜空が死んだことに関しての疑問を口にします。
「死んだら何で焼かんといかんの?」
「身体のどこに骨があるの?手と足?」
桜空の身体を焼かずにそのまま置いておいてほしかった兄の想い…
私には痛いほど理解できます。
桜空の遺骨を「さくくんの骨だよ」と説明しているため、桜空のどこの骨が入っているのだろうかと疑問に思ったのでしょう。
5歳兄が想うこと
「さくくんに逢いたいな~」「さくくんとあそびたいな~…」
と遺骨の前で思いふける5歳の姿は何とも言えません。
寂しさ、虚しさ、申し訳なさ…いろいろな感情が入り混じります。
たった1人の同性のきょうだい…一緒にいっぱい遊びたかったね。
5歳と2歳の兄弟、これから一緒にたくさん遊べるはずだったのに…
兄は振り返り、私に言いました。
「ねぇ、ママ、赤ちゃん次産むとき、さくくん産んでや!」
桜空をもう一度産むことはできないことが理解できない5歳の兄。
「全く同じ桜空くんはもう産まれてこれないんだよ」と言うと、
「何で?1回桜空くん産んだんやけん、もう1回産めるやろ?」
無茶苦茶なことを言っていますが、5歳の兄は真剣に自分の想いを母である私にぶつけてくれます。真剣に、それができる、叶うと思っているのです。
「もうママは赤ちゃんを産むことはないよ。
もし、赤ちゃんが来てくれても、その赤ちゃんはさくくんではないからね。
ママは1回さくくんを産めたけれど、もう1回全く同じ顔の、同じ性格のさくくんを産むことはできないんだよ」
「え~何で~??」「ママできるやろ?」「さくくんママのお腹にこないかな~」
できないよ、と言ったにも関わらず、聞いていないのか…理解していないのか…
一時ずっと同じこと独り言のように言ってお願いしていました。
一見、5歳の子どもが無理な想いを言っただけに見えるかもしれません。
しかし、私は息子の言葉や想いで一瞬幸せになれました。
5歳の純粋な想いに「私もそう願いたい、それが叶うのであれば…」と夢見ることができたからです。
弟想いの兄のおかげです。
桜空への永遠の想い
兄はきっとこれから「弟が生きていたらどんな人生だっただろうか」
「桜空はどんな弟だっただろうか」と想うでしょう。
毎日、毎日、私たち家族は桜空のことを想っています。
姿が見えなくてもずっと6人家族です。
心はいつも傍にあると思っています。
つらい想いはずっと消えません。
私も主人もきょうだいもずっとつらいです。
まだ一緒にいれる、きっと良くなってまた一緒に生活できる
まさか、こうなってしまうなんて
人生は予定通りにいきません
何でこんな人生なのでしょう
可愛い頑張り屋の桜空が死ななくてはいけなかったのはなぜなのでしょうか
だけれど、桜空が教えてくれた
「人生には必ず終わりがある」ということ。
桜空は一生懸命生きてくれました。
私もきょうだいも、桜空に恥じることなく一生懸命生きて、そして桜空の元にいつか逝ける
そう信じて今を生きたいと思います。
桜空想いの優しい子どもたちとともに
一日一生、桜空に恥じぬよう今日も生きたいと思います!