【NIPT陰性=安心ではない】病気や障害の可能性|NIPTの欠点

NIPTって何?

別名:新型出生前診断

出生前診断(「しゅっしょうまえしんだん」あるいは、「しゅっせいぜんしんだん」と読みます)の中で、羊水を採って調べる羊水検査とは違い、非侵襲的に胎児の染色体異常を知ることができる検査方法の一つです。

妊娠10~16週に母体の採血(10ml程)を行い、結果の精度は90%程です。

NIPTでは13、18、21トリソミーの染色体異常がわかる検査です。

NIPTで上記3つ以外の染色体検査も追加費用で可能ですが、陽性的中率が10~50%と低く、有用性がないため海外でも推奨されていません。

助産師が思うNIPTのメリット

  1. 一番のメリットはお母さんにも赤ちゃんにも危険性がないことです。
    母体の採血のみであるため、簡単に行うことができます。
  2. NIPTで胎児の異常が判明した際には22週より早い週数であるため、妊娠を継続するか、中断するかの選択肢があります。
  3. 妊娠継続を決めた場合、赤ちゃんの精査が可能な総合病院に転院し、赤ちゃんにとってより万全の状態で出産に臨み、出産後すぐに赤ちゃんが精査してもらえる状況に備えることができます。

助産師が思うNIPTのデメリット

  1. 費用が高額です。
    15万円前後であることが多いです。
    羊水検査と変わらない金額が必要になります。
  2. 「NIPTが陰性=胎児は健康」ではないということです。
    NIPTでは13、18、21トリソミーの染色体異常がわかる検査です。
    染色体は22本あり、染色体異常はNIPTで判明する3つの他にも多く存在します。
    また、胎児が大きくなってから判明する異常や病気、産まれてから、数年経ってからわかる病気は山のように存在します。
    そのため、NIPTが陰性でも胎児が健康であるという証明にはなりません。
  3. NIPTは精度90%程、そのため確定検査ではありません。
    「NIPTで陽性であったが羊水検査をしたら陰性だった」
    「NIPTで陰性であったが産まれたらダウン症だった」
    ということはあり得るのです。
    NIPTは精度100%の確定診断ではないのです。
  4. 赤ちゃんの異常がわかった際に、ご夫婦、ご家族で意見や想いの違いが生じる可能性があります。
    方向性を一つにすることに悩み苦しむ可能性があります。
    関係に溝ができ、修復不可能になる可能性もあります。
    命の選択になるため、それくらい深刻な問題なのです。
    そのため、NIPTを受ける覚悟が必要であること、もし異常が見つかった場合のことまでご夫婦で、ご家族で話し合いをして受ける必要があります。
  5. 難しい決断を迫られ、NIPTを受けたことを後悔する場合もあります。
    受ける前は「何か異常があれば諦める、育てられない」と思っていても、実際に異常がわかり決断するときには気持ちは揺らぐことが多いです。
    この問題で家族関係が崩れたり、諦めたが自責の念を持ち続けているお母さんは多いのです。

NIPTが受けられる人

以前は35歳以上であることが前提であったNIPTですが、35歳以上でなくても妊婦さんの希望で受けられるようになりました。

NIPTを受けようと思っている方へ

私は助産師としても、4人産んだ母としても、先天性異常のある子どもの母であった立場としても、NIPTに否定的な思いはありません
なぜなら、今の令和の時代も病気や障害、染色体異常の子どもを育ていきやすい社会ではないからです。
母親が仕事ができない、簡単に外出できない状況、今の状態も将来も心配で不安で精神的にも身体的にも疲労は蓄積する一方です。
また、病気や障害、染色体異常の子どもは健康である子どもよりも入院は多くなることがほとんどです。
関東・関西・九州は完全看護である病院が1つ2つあるかもしれませんが、私が住んでいる四国に完全看護である小児科がある病院は2022年の時点で1つもなく、夜間のみの帰宅も許されず、24時間の付き添いが強制です。
子どもの傍にいたくても、きょうだいがいる場合、極度の疲労が蓄積している場合、24時間は難しいのです。
せめて夜間だけでも、母親が家でしっかりと睡眠がとれたり、きょうだい児と関われる時間がとれるようにしなければいけません。

NIPTで異常が判明した場合はどうするか

このようなことから、安易に綺麗事だけで「産んで下さい」とは言えないのが現状です。
助産師として、お腹に宿った命には意味がある…そう言いたくても、産まれてきた赤ちゃんは社会で育てる体制が今の社会にはありません。
結局は「家族でどうにかしてください」あるいは「施設に入れてください」
この2つの選択肢しかないのです。

NIPTは何も異常がなければ「よかった…」で終わる検査ですが、問題は異常があったときです。
NIPTを受け、陽性であった場合の、特に母親の精神的な問題はとても大きいと感じます。
そのため、安易に受けてはいけない検査だと思っています。
5つのデメリットを踏まえて、NIPTを受けるようにして下さい。

大切なのは社会の改善

大切なことは、どんな赤ちゃんが産まれてきても社会で育てて行ける体制を作ることです。
どんな赤ちゃんも、産まれてこれた赤ちゃんの存在に感謝し、産まれてきた赤ちゃんが愛情を受ける権利があると思っています。

皆がまずは知ることから、そして産む決断をしたり、産む選択肢しかなかったとしても産まれてきた赤ちゃんが社会で守られながら愛されながら生きていける社会になることを望んでいます。

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